はじめに
平方完成は、二次関数を学ぶときに必ず使う基本操作です。
ただし、平方完成でつまずく人の多くは、公式そのものを知らないというよりも、次の部分でミスをしています。
- \( x \) の係数を半分にするところ
- 足して引く処理の意味
- \( x^2 \) の係数が \( 1 \) でないときのくくり出し
- 平方完成後の式から頂点を読むときの符号
この記事では、平方完成を公式暗記ではなく、式変形の手順として説明します。
特に、基本形の \( x^2+bx+c \) 型と、係数がついた \( ax^2+bx+c \) 型を分けて扱います。途中式も省略せずに確認するので、符号ミスが起きる場所まで意識しながら読み進めてください。
基本事項
平方完成とは、二次式を次のような形に変形することです。
この形にすると、二次関数のグラフについて次の情報が読み取りやすくなります。
| 特徴 | 式の中の要素 | 読み取れる情報 |
|---|---|---|
| 頂点 | \( p, q \) | 点 \( (p,q) \) |
| 軸 | \( p \) | 直線 \( x=p \) |
| グラフの向き | \( a \) | \( a>0 \) で下に凸、\( a<0 \) で上に凸 |
平方完成の出発点は、次の展開公式です。
この式を逆に見ると、
となります。
つまり、\( x^2 \) と \( x \) の項を見て、平方の形 \( (x+m)^2 \) を作るのが平方完成です。
「平方完成 公式」として、一般に次の形を見かけることがあります。これは丸暗記しなくてよい公式です。
ただし、この公式を丸暗記しようとすると、符号や分数でミスしやすくなります。実戦では、公式をそのまま使うよりも、「\( x \) の係数を半分にする」「足した分を引く」「必要なら先に \( x^2 \) の係数でくくる」という手順で覚える方が安定します。
ここで重要なのは、\( x \) の係数です。
たとえば、
では、\( x \) の係数は \( -6 \) です。
\( (x+m)^2=x^2+2mx+m^2 \) と比べると、
なので、
です。
したがって、
から作る平方の形は、
です。
ただし、
なので、もとの \( x^2-6x \) よりも \( 9 \) だけ多くなっています。
そのため、増やした \( 9 \) を引いて、
とします。
平方完成でよく使う「半分にして、2乗を足して引く」という処理は、勝手に増やした分を打ち消すための処理です。
解法の判断基準
平方完成では、最初に式の形を見て方針を決めます。
\( x^2+bx+c \) 型の場合
\( x^2 \) の係数が \( 1 \) のときは、次の手順で進めます。
- \( x \) の係数を半分にします。
- その数を使って \( (x+\text{半分})^2 \) を作ります。
- 勝手に増えた「半分の2乗」を引きます。
- 最後に定数項を計算します。
一般に、
は、次のように変形できます。
ただし、この記事ではこの公式を丸暗記するよりも、毎回「\( x \) の係数の半分を作る」と考えることを重視します。
\( ax^2+bx+c \) 型の場合
\( x^2 \) の係数が \( 1 \) ではないときは、最初に \( x^2 \) と \( x \) の項だけを \( a \) でくくります。
たとえば、
なら、
の部分だけを \( -2 \) でくくります。
ここで、定数項 \( -3 \) まで一緒にくくらないのが基本です。
理由は、平方完成で操作する中心が \( x^2 \) と \( x \) の項だからです。まず \( x^2 \) の係数を \( 1 \) にして、括弧の中で平方の形を作ります。定数項は、そのあとで外側の係数を分配して整理します。
つまり、
では、
の形を作ってから、括弧の中を平方完成します。
このとき、特に \( a \) が負の数の場合は符号ミスが起きやすいため、くくった直後に展開して確認する必要があります。
また、\( b \) が \( a \) で割り切れないときは分数が出ますが、手順は同じです。分数になっても、\( x \) の係数を半分にして平方の形を作ります。
例題
問題
次の二次関数を平方完成しなさい。
- \( y=x^2-6x+5 \)
- \( y=-2x^2+8x-3 \)
方針
1つ目は \( x^2+bx+c \) 型です。\( x^2 \) の係数が \( 1 \) なので、\( x \) の係数 \( -6 \) の半分を使って平方の形を作ります。
2つ目は \( ax^2+bx+c \) 型です。\( x^2 \) の係数が \( -2 \) なので、最初に \( x^2 \) と \( x \) の項だけを \( -2 \) でくくります。その後、括弧の中で平方完成します。
解答
例題1:\( y=x^2-6x+5 \)
まず、\( x \) の係数 \( -6 \) の半分を考えます。
したがって、平方の形は \( (x-3)^2 \) です。
ただし、
なので、\( x^2-6x \) に対して \( 9 \) が余分に増えています。
そのため、\( 9 \) を引いて調整します。まず平方の形を作り、残った定数を後ろでまとめます。
よって、
です。
例題2:\( y=-2x^2+8x-3 \)
まず、\( x^2 \) と \( x \) の項だけを \( -2 \) でくくります。
ここで、
なので、くくり出しは正しくできています。
次に、括弧の中の
を平方完成します。
\( x \) の係数 \( -4 \) の半分は、
です。
したがって、平方の形は \( (x-2)^2 \) です。
ただし、
なので、括弧の中では \( 4 \) が余分に増えます。
そのため、\( 4 \) を引いて調整します。
ここで、外側の \( -2 \) を分配します。
よって、
です。
解答の確認
例題1の答えを展開して確認します。
もとの式と一致します。
例題2の答えも展開して確認します。
もとの式と一致します。
平方完成では、最後に展開して元の式に戻るかを確認すると、符号ミスを見つけやすくなります。
平方完成の手順は、二次関数の頂点や軸を読み取るだけでなく、最大値・最小値の問題にもつながります。次の段階として、二次関数の最大値・最小値の求め方 も確認すると、平方完成を使う目的が整理しやすくなります。
平方完成の手順を理解したら、MathGrAIlの演習で1問解いてみましょう。符号ミスをしやすい途中式も、実際に手を動かすと確認しやすくなります。
MathGrAIlで平方完成の基礎問題を解いてみるよくあるミス
ミス1:くくり出しで符号を間違える
たとえば、
を平方完成するとき、
とする必要があります。
しかし、次のようにしてしまうミスがあります。
これは誤りです。
なぜなら、
となり、もとの \( +8x \) に戻らないからです。
正しい判断基準は、くくり出した直後に一度展開して確認することです。
この確認を入れるだけで、負の係数をくくるときのミスを減らせます。
ミス2:足して引く処理を片方だけにしてしまう
平方完成では、
を
にするだけではいけません。
ですが、もとの式より \( 9 \) 増えています。
そのため、必ず同じ式の中で \( 9 \) を引きます。
ミスが起きる理由は、平方の形を作ることだけに意識が向き、式全体の値を変えてはいけないという点を忘れるためです。
正しい判断基準は、「勝手に足した分は、同じ式の中で必ず引く」と考えることです。
ミス3:頂点の符号をそのまま読んでしまう
平方完成した式が
のとき、頂点は \( (2,3) \) です。
ここで、括弧の中の \( -2 \) をそのまま読んで、頂点を \( (-2,3) \) とするのは誤りです。
頂点の \( x \) 座標は、括弧の中が \( 0 \) になる値です。
より、
です。
したがって、頂点の \( x \) 座標は \( 2 \) です。
正しい判断基準は、\( a(x-p)^2+q \) の形を見て、頂点を \( (p,q) \) と読むことです。符号を迷ったときは、「括弧の中が \( 0 \) になる \( x \)」を求めると安全です。
ミス4:外側の係数を定数部分に分配し忘れる
たとえば、
から、
としてしまうのは誤りです。
\( -4 \) は中括弧の中にあるので、外側の \( -2 \) を分配する必要があります。
正しくは、
です。
正しい判断基準は、中括弧を外す前に「外側の係数がどこまでかかっているか」を確認することです。
類題演習への接続
平方完成は、読んで理解しただけでは計算ミスが残りやすい単元です。特に、次の順番で演習すると定着しやすくなります。
- \( x^2+bx+c \) 型の平方完成
- \( x \) の係数が負の数の平方完成
- \( ax^2+bx+c \) 型の平方完成
- \( a \) が負の数の場合の平方完成
- 平方完成後に頂点と軸を読み取る問題
MathGrAIlでは、記事で手順を理解したあと、ログイン後の演習画面で二次関数の基礎問題に取り組めます。途中式で符号を間違えた場合も、AI添削を使うことで、どの段階でずれたかを確認しやすくなります。
平方完成の手順を確認したら、MathGrAIlで演習する から、実際に手を動かして計算の精度を確認してください。
まとめ
平方完成で押さえるべき点は、次の通りです。
- \( x^2+bx+c \) 型では、\( x \) の係数を半分にして平方の形を作る
- 勝手に足した2乗の分は、必ず同じ式の中で引く
- \( ax^2+bx+c \) 型では、最初に \( x^2 \) と \( x \) の項だけを \( a \) でくくる
- 分数が出ても、平方完成の手順は変わらない
- くくり出し後は、展開して元の式に戻るか確認する
- 頂点の \( x \) 座標は、括弧の中が \( 0 \) になる値として読む
平方完成は、二次関数のグラフ、頂点、軸、最大値・最小値の問題へつなげるための基本操作です。
記事で手順を理解したあとは、MathGrAIlで \( x^2+bx+c \) 型、\( ax^2+bx+c \) 型、頂点の読み取りまで順に練習してください。
MathGrAIlで演習する