基礎問題集
数学1 命題と集合「背理法」の問題15 解説
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解説
方針・初手
**(1)** は素数の平方根が無理数であることの典型的な証明である。背理法を用い、$\sqrt{p}$ が有理数であると仮定して矛盾を導く。
**(2)** は実数係数多項式において、複素数 $z$ が解ならばその共役複素数 $\bar{z}$ も解になることの証明である。共役複素数の性質 $\overline{z_1 + z_2} = \overline{z_1} + \overline{z_2}$、$\overline{z_1 z_2} = \overline{z_1} \cdot \overline{z_2}$、および実数 $c$ について $\bar{c} = c$ を用いる。
**(3)** は背理法を用いる。$f(w) = 0$ と仮定し、式に $w = \sqrt{p} + qi$ を代入して実部と虚部に分ける方法、あるいは **(2)** の結果を利用して解と係数の関係から矛盾を導く方法が考えられる。
解法1
**(1)**
$\sqrt{p}$ が有理数であると仮定する。 このとき、互いに素な自然数 $m, n$ を用いて、以下のように表すことができる。
$$ \sqrt{p} = \frac{m}{n} $$
両辺を2乗して分母を払うと、次の式を得る。
$$ p n^2 = m^2 $$
左辺は $p$ の倍数であるから、右辺の $m^2$ も $p$ の倍数である。 $p$ は素数であるため、$m$ 自身も $p$ の倍数となる。 したがって、ある自然数 $k$ を用いて $m = pk$ と表せる。 これを先ほどの式に代入する。
$$ p n^2 = (pk)^2 $$
$$ p n^2 = p^2 k^2 $$
$$ n^2 = p k^2 $$
この式から、$n^2$ は $p$ の倍数であり、$p$ が素数であることから $n$ も $p$ の倍数となる。 これは、$m$ と $n$ が共に $p$ の倍数であることを意味し、$m$ と $n$ が互いに素であるという仮定に矛盾する。 したがって、$\sqrt{p}$ は無理数である。
**(2)**
$f(z) = 0$ と仮定すると、以下の式が成り立つ。
$$ z^3 + az^2 + b = 0 $$
両辺の共役複素数をとる。
$$ \overline{z^3 + az^2 + b} = \overline{0} $$
共役複素数の性質より、和と積の共役はそれぞれの共役の和と積になるため、次のように変形できる。
$$ (\bar{z})^3 + \bar{a}(\bar{z})^2 + \bar{b} = 0 $$
ここで、$a, b$ は実数であるから $\bar{a} = a, \bar{b} = b$ である。よって、
$$ (\bar{z})^3 + a(\bar{z})^2 + b = 0 $$
となり、これは $f(\bar{z}) = 0$ を意味する。
**(3)**
$a, b$ を有理数とし、$f(w) = 0$ と仮定して矛盾を導く。
$$ w^3 + aw^2 + b = 0 $$
$w = \sqrt{p} + qi$ を代入する。
$$ (\sqrt{p} + qi)^3 + a(\sqrt{p} + qi)^2 + b = 0 $$
各項を展開する。
$$ (\sqrt{p} + qi)^3 = (\sqrt{p})^3 + 3(\sqrt{p})^2(qi) + 3\sqrt{p}(qi)^2 + (qi)^3 = p\sqrt{p} + 3pqi - 3\sqrt{p}q^2 - q^3i $$
$$ a(\sqrt{p} + qi)^2 = a(p + 2\sqrt{p}qi - q^2) = ap + 2aq\sqrt{p}i - aq^2 $$
これらを方程式に代入して、実部と虚部に整理する($p, q, a, b, \sqrt{p}$ はすべて実数であることに注意する)。
$$ (p\sqrt{p} - 3\sqrt{p}q^2 + ap - aq^2 + b) + (3pq - q^3 + 2aq\sqrt{p})i = 0 $$
複素数が $0$ になるためには、実部と虚部がともに $0$ でなければならない。虚部についての等式を取り出す。
$$ 3pq - q^3 + 2aq\sqrt{p} = 0 $$
$q$ は $0$ でない有理数であるから、両辺を $q$ で割ることができる。
$$ 3p - q^2 + 2a\sqrt{p} = 0 $$
$$ q^2 - 3p = 2a\sqrt{p} $$
ここで、$a$ の値によって場合分けを行う。
**(i)** $a \neq 0$ の場合
両辺を $2a$ で割る。
$$ \sqrt{p} = \frac{q^2 - 3p}{2a} $$
$p, q, a$ はすべて有理数であるから、右辺は有理数である。 しかし、これは **(1)** で証明した「$\sqrt{p}$ は無理数である」という事実に矛盾する。
**(ii)** $a = 0$ の場合
式は $q^2 - 3p = 0$ となり、$q^2 = 3p$ を得る。 このとき、実部の等式 $p\sqrt{p} - 3\sqrt{p}q^2 + ap - aq^2 + b = 0$ に $a = 0, q^2 = 3p$ を代入する。
$$ p\sqrt{p} - 3\sqrt{p}(3p) + b = 0 $$
$$ p\sqrt{p} - 9p\sqrt{p} + b = 0 $$
$$ -8p\sqrt{p} + b = 0 $$
$$ b = 8p\sqrt{p} $$
$p$ は素数であるから $p > 0$ であり、$8p \neq 0$ である。よって、
$$ \sqrt{p} = \frac{b}{8p} $$
$b, p$ は共に有理数であるから、右辺は有理数である。 これも **(1)** の結果に矛盾する。
**(i)**, **(ii)** のいずれの場合も矛盾が生じるため、最初の仮定が誤りである。 したがって、$a, b$ が有理数ならば $f(w) \neq 0$ であることが示された。
解法2
**(3)の別解(解と係数の関係を利用)**
$a, b$ を有理数とし、$f(w) = 0$ と仮定して矛盾を導く。 $a, b$ は実数でもあるため、**(2)** の結果から $f(\bar{w}) = 0$ も成り立つ。 $w = \sqrt{p} + qi$、$q \neq 0$ より $w$ は虚数であり、$w \neq \bar{w}$ である。 したがって、実数係数の3次方程式 $x^3 + ax^2 + b = 0$ は、互いに共役な複素数解 $w, \bar{w}$ を持つ。 3次方程式の3つの解のうち、2つが虚数解であれば、残りの1つは必ず実数解となる。この実数解を $\alpha$ とする。
解と係数の関係より、以下の3式が成り立つ。
$$ w + \bar{w} + \alpha = -a $$
$$ w\bar{w} + \bar{w}\alpha + \alpha w = 0 $$
$$ w\bar{w}\alpha = -b $$
ここで、$w + \bar{w} = 2\sqrt{p}$、$w\bar{w} = (\sqrt{p})^2 + q^2 = p + q^2$ である。 第1式から $\alpha$ を求める。
$$ 2\sqrt{p} + \alpha = -a $$
$$ \alpha = -a - 2\sqrt{p} $$
これを第2式 $\alpha(w + \bar{w}) + w\bar{w} = 0$ に代入する。
$$ (-a - 2\sqrt{p})(2\sqrt{p}) + (p + q^2) = 0 $$
$$ -2a\sqrt{p} - 4p + p + q^2 = 0 $$
$$ q^2 - 3p = 2a\sqrt{p} $$
この結果は解法1で得た関係式と完全に一致する。 以降は解法1と同様に、$a \neq 0$ と $a = 0$ の場合に分け、いずれも $\sqrt{p}$ が有理数という形で表されることを示し、**(1)** に矛盾することを言えばよい(記述は解法1を参照)。
解説
有理数係数・実数係数の方程式における解の性質を問う総合問題である。 (1)の無理数の証明、(2)の実数係数方程式における共役複素数解の存在は、いずれも教科書レベルの基本事項であり、確実に証明できるようにしておきたい。 (3)では、代入して実部・虚部を比較する方針(解法1)が最も素直であるが、3次方程式の解と係数の関係(解法2)を用いると、計算の見通しがさらに良くなる。(2)の誘導があるため、解法2の発想に至りやすい構成となっている。いずれの方針でも「無理数 $\sqrt{p}$ について解き、それが有理数に等しくなる」という矛盾を導くのが着眼点である。
答え
**(1)** 背理法を用いて証明した。(解法参照)
**(2)** $f(z)=0$ の両辺の共役複素数をとり、実数係数の性質を用いて証明した。(解法参照)
**(3)** 背理法を用い、$f(w)=0$ と仮定すると $\sqrt{p}$ が有理数となり、(1)に矛盾することを用いて証明した。(解法参照)