基礎問題集
数学2 複素数と方程式「高次方程式」の問題44 解説
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解説
方針・初手
$a,b,c$ を根にもつモニックな3次方程式を考えると、対称式の情報を一度に扱える。 与えられた条件より
$$ x^3-(a+b+c)x^2+(ab+bc+ca)x-abc=0 $$
であるから、
$$ x^3-2x^2+3x-2=0 $$
を用いるのが自然である。 特に、各根 $r=a,b,c$ は
$$ r^3=2r^2-3r+2 $$
を満たすので、高い冪の和は漸化式で求められる。
解法1
まず
$$ a+b+c=2,\qquad ab+bc+ca=3,\qquad abc=2 $$
である。
(1) $a^2+b^2+c^2$ と $a^8+b^8+c^8$
$ a^2+b^2+c^2 $ は基本対称式から直接求まる。
$$ a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca)=2^2-2\cdot 3=-2 $$
次に
$$ s_n=a^n+b^n+c^n $$
とおく。 各根 $r$ について
$$ r^3-2r^2+3r-2=0 $$
より
$$ r^n=2r^{n-1}-3r^{n-2}+2r^{n-3}\qquad (n\ge 3) $$
であるから、和をとって
$$ s_n=2s_{n-1}-3s_{n-2}+2s_{n-3}\qquad (n\ge 3) $$
を得る。
初期値は
$$ s_0=3,\qquad s_1=a+b+c=2,\qquad s_2=a^2+b^2+c^2=-2 $$
である。よって順に計算すると、
$$ \begin{aligned} s_3&=2s_2-3s_1+2s_0=2(-2)-3\cdot2+2\cdot3=-4,\\ s_4&=2s_3-3s_2+2s_1=2(-4)-3(-2)+2\cdot2=2,\\ s_5&=2s_4-3s_3+2s_2=2\cdot2-3(-4)+2(-2)=12,\\ s_6&=2s_5-3s_4+2s_3=2\cdot12-3\cdot2+2(-4)=10,\\ s_7&=2s_6-3s_5+2s_4=2\cdot10-3\cdot12+2\cdot2=-12,\\ s_8&=2s_7-3s_6+2s_5=2(-12)-3\cdot10+2\cdot12=-30. \end{aligned} $$
したがって
$$ a^8+b^8+c^8=-30 $$
である。
(2) $x^3+Ax^2+Bx+C=0$ が $x=a,b,c$ を根にもつときの $A,B,C$
Viète の公式より、
$$ a+b+c=-A,\qquad ab+bc+ca=B,\qquad abc=-C $$
である。与えられた条件を代入して
$$ -A=2,\qquad B=3,\qquad -C=2 $$
となるから、
$$ A=-2,\qquad B=3,\qquad C=-2 $$
である。
(3) $a^5+b^5+c^6$
ここは注意が必要である。 この式は対称式ではないので、$a,b,c$ の対応を指定しない限り値は一意に定まらない。
実際、$a,b,c$ は
$$ x^3-2x^2+3x-2=(x-1)(x^2-x+2) $$
の3根であるから、
$$ {a,b,c}=\left\{1,\ \frac{1+i\sqrt7}{2},\ \frac{1-i\sqrt7}{2}\right\} $$
である。
したがって、たとえば $c=1$ とおけば
$$ a^5+b^5+c^6=(a^5+b^5)+1=s_5-1+1=12 $$
となる。一方、$c$ を複素根のどちらかにとると値は別になる。 ゆえに、設問 (3) はこのままでは一意に定まらない。
解説
この問題の中心は、$a,b,c$ を3次方程式の根としてまとめることである。 すると Viète の公式で (2) は直ちに処理でき、さらに各根が満たす関係式
$$ r^3=2r^2-3r+2 $$
から冪和 $s_n=a^n+b^n+c^n$ の漸化式が得られるため、(1) の高い冪も機械的に求められる。
一方、(3) は非対称式である。与えられているのは $a,b,c$ の対称式だけなので、通常は非対称式の値は決まらない。この点を見落として「勝手に $c=1$ と置いて答える」と論理が不足する。
答え
**(1)**
$$ a^2+b^2+c^2=-2,\qquad a^8+b^8+c^8=-30 $$
**(2)**
$$ A=-2,\qquad B=3,\qquad C=-2 $$
**(3)**
設問のままでは一意に定まらない。
ただし、もし $c=1$ と指定すれば
$$ a^5+b^5+c^6=12 $$
となる。