基礎問題集
数学A 整数問題「フェルマーの小定理」の問題4 解説
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解説
方針・初手
$d_m$ は二項係数
$$ {}_mC_1,\ {}_mC_2,\ \ldots,\ {}*mC*{m-1}
$$
のすべてを割り切る最大公約数である。したがって、まず $d_m$ が各二項係数を割り切ることを、二項展開の中で利用する。
特に
$$ (k+1)^m-(k+1)
$$
を展開すると、途中に現れる係数がすべて ${}_mC_r$ になるので、帰納法と相性がよい。
解法1
**(1)**
$m$ が素数であるとする。
$1 \leq r \leq m-1$ に対して、
$$ {}_mC_r=\frac{m!}{r!(m-r)!}
$$
である。
$m$ は素数であり、$r<m,\ m-r<m$ だから、$r!$ と $(m-r)!$ はいずれも $m$ を素因数にもたない。一方、分子 $m!$ は $m$ を素因数にもつ。
したがって、各 $r=1,2,\ldots,m-1$ について
$$ m \mid {}_mC_r
$$
が成り立つ。
よって、$d_m$ は少なくとも $m$ の倍数である。
一方、
$$ {}_mC_1=m
$$
であるから、すべての二項係数の最大公約数である $d_m$ は $m$ を割り切る。
以上より、
$$ d_m=m
$$
である。
**(2)**
すべての自然数 $k$ に対して
$$ d_m \mid k^m-k
$$
を示す。$k$ に関する数学的帰納法を用いる。
まず $k=1$ のとき、
$$ 1^m-1=0
$$
であるから、$d_m$ で割り切れる。
次に、ある自然数 $k$ について
$$ d_m \mid k^m-k
$$
が成り立つと仮定する。
このとき、二項定理より
$$ \begin{aligned} (k+1)^m &= k^m+{}_mC_1k^{m-1}+{}_mC_2k^{m-2}+\cdots+{}*mC*{m-1}k+1 \end{aligned} $$
である。したがって、
$$ \begin{aligned} (k+1)^m-(k+1) &=k^m-k+{}_mC_1k^{m-1}+{}_mC_2k^{m-2}+\cdots+{}*mC*{m-1}k \end{aligned}
$$
となる。
帰納法の仮定より、$k^m-k$ は $d_m$ で割り切れる。また、$d_m$ は ${}_mC_1,{}_mC_2,\ldots,{}*mC*{m-1}$ の最大公約数であるから、各二項係数 ${}_mC_r$ は $d_m$ で割り切れる。
したがって、右辺のすべての項は $d_m$ で割り切れる。よって、
$$ d_m \mid (k+1)^m-(k+1)
$$
が成り立つ。
以上より、数学的帰納法によって、すべての自然数 $k$ に対して
$$ d_m \mid k^m-k
$$
が示された。
**(3)**
$m$ が偶数であるとする。
まず、$d_m$ が奇素因数をもたないことを示す。奇素数 $p$ が $d_m$ を割り切ると仮定する。
(2) より、すべての自然数 $k$ について
$$ d_m \mid k^m-k
$$
であるから、特に
$$ p \mid k^m-k
$$
がすべての自然数 $k$ について成り立つ。
ここで $k=p-1$ とおくと、
$$ p \mid (p-1)^m-(p-1)
$$
でなければならない。
ところが、法 $p$ で考えると、$p-1 \equiv -1$ より、$m$ が偶数であることから
$$ (p-1)^m-(p-1)\equiv (-1)^m-(-1)=1+1=2 \pmod p
$$
となる。
$p$ は奇素数だから、$2 \not\equiv 0 \pmod p$ である。これは矛盾である。
したがって、$d_m$ は奇素因数をもたない。
次に、$4$ が $d_m$ を割り切らないことを示す。もし $4\mid d_m$ なら、(2) より $k=2$ として
$$ 4\mid 2^m-2
$$
でなければならない。
しかし、
$$ 2^m-2=2(2^{m-1}-1)
$$
であり、$m\geq 2$ だから $2^{m-1}$ は偶数、したがって $2^{m-1}-1$ は奇数である。よって $2^m-2$ は $2$ では割り切れるが、$4$ では割り切れない。
これは $4\mid d_m$ に矛盾する。
以上より、$d_m$ は奇素因数をもたず、さらに $4$ でも割り切れない。したがって、$d_m$ に含まれる素因数は $2$ だけであり、その指数は高々 $1$ である。
よって、
$$ d_m=1 \quad \text{または} \quad d_m=2
$$
である。
解説
この問題の中心は、$d_m$ が「すべての中間二項係数を割り切る数」であることを、二項定理に結びつける点である。
(2) では、
$$ (k+1)^m-(k+1)
$$
を展開すると、帰納法の仮定で扱える $k^m-k$ と、係数がすべて ${}_mC_r$ である項に分かれる。この形に変形できれば、$d_m$ の定義がそのまま使える。
(3) では、(2) の結果を利用して、$d_m$ の素因数を制限する。偶数 $m$ に対して $k=p-1$ を代入すると、奇素数 $p$ が $d_m$ を割り切る可能性を排除できる。また $k=2$ を代入することで、$4$ が $d_m$ を割り切る可能性も排除できる。したがって $d_m$ は $1$ または $2$ に限られる。
答え
**(1)**
$$ d_m=m
$$
**(2)**
すべての自然数 $k$ に対して、
$$ d_m\mid k^m-k
$$
が成り立つ。
**(3)**
$m$ が偶数のとき、
$$ d_m=1 \quad \text{または} \quad d_m=2
$$
である。